保険の材料との比較

保険の歯科材料(金属やプラスチックの歯)

「セラミック」の詰め物や被せ物と、保険診療で使用される「金属」や「プラスチック」の詰め物や被せ物とはどのような違いがあるのでしょうか。ここでは特に保険治療で使用される金属やプラスチックを中心にご説明いたします。

水銀アマルガム

水銀の含まれた合金

水銀アマルガムは、保険診療で使用する歯科材料です。以前は広く使用されており、特に1970年代に虫歯の治療を行った方には多く見られ、現在でも少なくはなりましたが使用されております。この水銀アマルガムは、銀、錫、銅、亜鉛、無機水銀からなる合金で、重量換算にすると約50%が水銀で出来ています。

水銀アマルガムは、歯を削った部分に充填(じゅうてん)して使用します。充填とは、型を取って作ったものをはめ込むのではなく、ペースト状のものを削った部分に流し込んで、硬化させる方法です。デメリットとしては、口腔内で経年劣化・腐食が起き、溶け出して体内に蓄積されるリスクがあります。研究によると、水銀アマルガムは、歯に充填後、3年以内に劣化が始まり、10年後には、総重量の約70%以上が減少するとされています。また、これにより歯茎に黒いシミ(アマルガムタトゥ)ができているケースも少なくありません。

水銀アマルガム

劣化した水銀アマルガム

世界ではアマルガム禁止の動きも

水銀は人体に有害な重金属の中では神経毒性の強い物質で、非常に毒性の強い、液体の重金属です。実際、毒物指定されています。
水銀アマルガムは、水銀が含まれることから、アマルガムを規制する動きが各国で進んでいます。1980年代には、スウェーデン政府が妊婦にアマルガムの詰め物をしないよう警告を発表しました。また、1990年代にはイギリスでも同様の発表がされ、現在では、スウェーデン、イギリスでは使用禁止となっています。さらに米国では、アマルガム関連の訴訟が増えています。

水銀蒸気のリスク

アマルガムは、唾液が付くだけ、舌が触れるだけなど、簡単な刺激で気化して水銀蒸気を発生させます。水銀は25°を超えると沸騰するため、アマルガムに熱い食べ物や飲み物がふれることによって、アマルガムに含まれている水銀がすぐに蒸発して、体内に蓄積されてしまいます。

International Academy of Oral Medicine and Toxicology  
” Smoking Teeth — Toxic Dental Mercury Fillings also known as “silver amalgam fillings” ”

金銀パラジウム合金

健康面のリスク

金銀パラジウム合金は、「金パラ」などともよばれ、保健診療では現在広く使用されている歯科金属です。削った部分の方を取って、金銀パラジウム合金で作った詰め物や被せ物をセメントで合着します。現在、いわゆる「銀歯」の多くがこの金銀パラジウム合金です。この金銀パラジウム合金は、金属アレルギー検査(リンパ球幼若化テスト)を行うと、半数程度の方に陽性反応が出るという特徴があります。

ドイツなどの歯科医療先進国では、パラジウムが人体に及ぼす悪影響を考慮し、「パラジウムフリー(パラジウムを含まない)」歯科材料を使うことを強く推奨しており、ドイツでは、保健省が歯科業界に対し、「幼児及び妊婦に、銅を含有するパラジウム合金と、水銀・銀アマルガム合金を使用しない」という勧告を出したという経緯もあります。

金銀パラジウム合金(左4番5番はアマルガム)

二次むし歯のリスク

また、金属の詰め物や被せ物では、金属を固定しているセメントが溶け出し、銀歯と天然歯の間に隙間ができ、そこから菌が入り込み、銀歯の下の見えない部分で、「二次むし歯(二次カリエス)」ができることも少なくありません。二次むし歯のやっかいなのは、神経が近い所からむし歯ができると、すぐに神経を取る治療になってしまうケースがあるところです。また、銀歯で見えないため、治療も遅れがちになりやすいため注意が必要です。

金銀パラジウム合金とすき間に広がる二次むし歯

銀歯を外すと二次むし歯が見えます

ニッケルクロム合金

一般的に金属には、金属アレルギーを引き起こしやすいものと、金などの貴金属のように、金属アレルギーを起こしにくいものがあります。水銀、パラジウム、ニッケル、クロムなどは、金属アレルギーを引き起こしやすいといわれています。

特にニッケルは、世界で最も多く金属アレルギーを引き起こしているという専門家もいる金属です。そのため、EUでは1994年にピアスや指輪など、皮膚に長い時間接するアクセサリーなどに対して、ニッケルの使用が規制された経緯があります。また、クロムはセメントによる皮膚炎が最も多かった金属でもあります。

ニッケルクロムは、必須ミネラルといって、人体には必要な金属ではありますが、それはあくまで非常に微量の場合です。量が多くなると発がん性に結びつくといわれています。このニッケルクロムはEUの規制に先行して、クロムを含む材料の使用をソニーが全廃します。
ニッケルクロム合金は、インレー(詰め物)、クラウン(被せ物)、ブリッジ、小児の虫歯治療の乳歯冠、入れ歯のクラスプ(バネ)など様々な用途に使用されています。

ニッケルクロム合金のクラウン

ニッケルクロム合金のクラウンブリッジ

銀合金

銀合金も広く歯科治療に用いられている金属です。銀合金は、銀72%、インジウム12%、スズ9%、、亜鉛7%、などからなる合金です。安価で、柔らかく、加工しやすいため、金属の土台(メタルコア)に多く使用されています。この銀合金は、銀の食器やアクセサリーと同様、すぐに色が黒ずんできます。特に口腔内は、常に湿っている過酷な環境です。そのため、錆びやすく、すぐに黒ずんでくる銀を口腔内で使用すると、成分が溶け出して、歯ぐきを黒く変色させてしまったり、体内に取り込まれてしまうリスクがあります。

保険の歯科金属のメリット・デメリット(まとめ)
メリット
  • 健康保険適用のため治療費の負担が自由診療よりも少なくて済む
デメリット
  • 銀色で目立つ。腐食や錆、劣化すると黒ずんだりさらに審美性を損なう。
  • 金属がイオン化・溶出し、体内に取り込まれることで、金属アレルギーのリスクがある。
  • 金属が溶け出して歯茎に黒いシミ(メタルタトゥ)を作るリスクがある。
  • そもそも、水銀、銀、クロム、ニッケル、パラジウムなどが、健康面のリスクという見地から身体に理想的なものとはいえない。
  • 金属の劣化や延性による変形などによって、細菌が侵入することによる、二次むし歯のリスクがある。
  • 歯との間を埋めているセメントが溶け出し、すき間に細菌が侵入することによる、二次むし歯のリスクがある。
  • 汚れが付きやすいため歯周病のリスクが増す。

保険のプラスチック(レジン)

硬質レジン前装冠

硬質レジン前装冠は、裏側の見えない部分には金銀パラジウム合金を使用し、表側の見える部分に硬質レジンというプラスチックを貼り付けて、白い歯のような見た目に近づける形で被せる治療です。

硬質レジン前装冠は健康保険が適用できるので、治療費が安く済むことがメリットといえます。前から見える部分の金属をプラスチックで覆うことと、安く治療できることで、前歯の治療で多く用いられる治療です。

ただ、デメリットとして、プラスチックは割れやすい、熱で変形しやすい、水分、汚れを吸い黄ばみやすい、裏側に使用している金属でアレルギーのリスクがあるなどのデメリットがあります。

金属に表面だけプラスチックを貼り付けた硬質レジン前装冠

劣化して黄ばんでしまった硬質レジン前装冠のプラスチック

歯ぐきと人工歯の境目にできたむし歯

保険のコンポジットレジン

保険治療ではレジンによる治療が多く行われています。むし歯を削る量が少なくて済みますし、保険適用で安く済むメリットがあります。また歯科医師側も、型を取ったりといったことがないため、楽に治療ができます。

しかしデメリットもあります。コンポジットレジン治療では、トロトロとしたペースト状のプラスチックをむし歯を削った部分に流し込んで、光を当てて固めますが、光で硬化させる時に重合収縮という現象が起きて縮みます。この縮む時に歯とプラスチックの間にすき間が生じやすくなります。

保険治療では一人ひとりの患者様にかけられる治療時間が決まってしまうため、自由診療のように何層にも効果を繰り返すような手間がかけられません。プラスチックの収縮によりできたすき間から細菌が侵入し、二次むし歯ができているケースが多い現実があります。

前歯の劣化したコンポジットレジン


保険のプラスチックのメリット・デメリット(まとめ)
メリット
  • 健康保険適用のため治療費の負担が自由診療よりも少なくて済む
デメリット
  • プラスチックは、割れやすい性質がある。
  • プラスチックは、熱で変形しやすい性質がある。
  • プラスチックは、水分、汚れを吸う性質があり、黄ばみやすい。
  • 硬質レジン前装冠では、裏側に使用している金属でアレルギーのリスクがある。
  • コンポジットレジンでは重合収縮により歯との間にすき間ができ、すき間に細菌が侵入することによる、二次むし歯のリスクがある。
  • 劣化が早いため、すき間ができたりして、細菌が侵入することによる、二次むし歯のリスクがある。